アパートの相続における相続税評価とは?空室があったらどうなる?
賃貸アパートを相続する際、多くの方にとって相続税が気がかりになるでしょう。
アパートの相続税は決して小さくない金額ですし、賃貸アパートの場合は一般的な住宅とは異なる制度や条件が多いでしょう。
そのため、賃貸アパートの相続に関して疑問や不安を抱えてしまうことは無理もありません。
そこで今回は、賃貸アパートの相続に関して、相続税評価額や相続税の決まり方、空室の扱いなどについて解説します。
□相続税評価額とは?
相続税評価額とは、簡単に言うと、「相続税や贈与税を計算するときの基準となる価格」のことです。
基本的には相続が発生した時点の時価で評価されるもので、相続税を計算する際には欠かせない指標となります。
相続財産の中には現金や預貯金のように価格が分かりやすいものがある一方で、株式や不動産といった、価格を評価しにくいものもあります。
不動産の場合は、土地ごとに設定されている路線価をもとに価格を計算したり、固定資産税評価額に所定の倍率を乗じて価格を計算したりして、相続税評価額が算出されます。
また、相続が発生した際には、相続税を申告するために「財産目録」を作成します。
財産目録とは、被相続人の相続財産について、何がどれだけあるかをまとめた書類のことです。
言い換えると、相続によって何が受け渡されるのかが一覧としてまとめられた書類ということです。
プラスの財産はもちろんですが、マイナスの財産なども含めて全ての財産が記載されるため、相続方法を検討したり、遺産分割協議を進めたりする際にはとても重要な書類となります。
財産目録は被相続人が生前に作成する場合もあれば、相続発生後に相続人が自ら作成する場合もあります。
いずれにしても、総財産が明らかになり相続税対策につながることや、相続放棄をするかどうかの判断材料になること、遺産分割協議をスムーズに行うために必要になることなどから、非常に重要度の高い書類であると言えます。
このように、財産目録の内容や相続税評価額によって財産の総額が明確になり、それらの内容に基づいて相続税の支払いが必要か否か、必要だとすればいくらになるのかが明らかにされるのです。
□アパートの相続税はどう決まる?
不動産は土地と建物のそれぞれに対して、別々に評価額が決められます。
アパートを相続する場合、相続するアパートの評価に対しては減額措置を受けられますが、こうした減額措置も、土地と建物それぞれについて分かれています。
アパートなどの賃貸物件に使用されている土地は「貸家建付地」と呼ばれますが、貸家建付地の場合、地域によって定められた「借地権割合」、賃貸物件に適用される「借家権割合」、貸し出している部屋の割合に応じた「賃貸割合」をもとに、どのような減額措置が適用されるかが決まります。
建物の場合は、「借家権割合」と「賃貸割合」をもとに減額措置が適用されます。
それぞれの減額措置に関する詳細な解説はここでは割愛しますが、上記の減額措置を含めて、アパートの評価額は以下の計算式で算出できます。
・土地の評価額=更地の評価額 ×(1-借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
・建物の評価額=自用建物の評価額 ×(1-借家権割合 × 賃貸割合)
また、上記の計算過程を含めて、アパートの相続税は大まかに以下の流れで決定します。
1.遺産総額を導き出す
2.基礎控除額を差し引いて課税対象額を導き出す
3.相続人の法定相続通りの相続税額を算出する
4.相続税額を実際に相続した割合で振り分ける
5.控除額を算出し相続納税額を確定する
こうした一連の流れを経てアパートの相続税が決定しますが、アパートの相続税は減額措置によっても左右されるため、知識のある人や専門家に相談しつつ、減額措置を正しく把握して計算するようにしましょう。
□アパートの相続税評価における空室はどんな意味を持つのか?
*空室が多いと相続税評価額が高くなる
前述した通り、アパートの評価額を計算する際には、賃貸割合の分を減額して計算されます。
賃貸割合とは、「建物の床面積の合計に対して賃貸されている部分の床面積が占める割合」のことです。
ざっくり考えると、全部屋のうちの何部屋を賃貸しているかを表す割合と言っても良いでしょう。
賃貸割合が高いほど相続税評価額は小さくなるため、税負担を減らすという観点では、賃貸割合は高い方が望ましいと言えます。
言い換えると、アパートの中で空室があった場合、空室があった分だけ相続税評価額が高くなってしまうため、空室は少ない方が良いということになります。
*一時的な空室があった場合
アパートの相続が発生した場合、基本的には相続日の時点で各部屋を賃貸しているかどうかで賃貸割合が決まります。
しかし、一時的な空室とみなされた場合は、計算上は空室とみなされず、賃貸割合に含めることができます。
例えば、相続日の2週間前に借主が退去して相続日時点では空室であった場合、相続発生から3週間後に新たな借主が入居するなど、空室がすぐに埋まる可能性があります。
このように、相続日時点でたまたま空室であったという可能性が考えられる場合、その部屋は一時的な空室とみなされ、計算上は賃貸されていた部屋に含められる場合があるのです。
相続日時点での空室が一時的な空室と判定されるかどうかはケースバイケースで、納税者と税務署の間で争われた事例も存在します。
そのため、相続日時点で一時的な空室と見なせるような空室があった場合は、まずは税理士などの専門家に相談することがおすすめです。
□まとめ
今回は、アパートを相続した際の相続税評価額と、相続税の決まり方、空室の扱いなどについて解説しました。
賃貸アパートの相続税に関しては、一般的な住居の相続税とは異なる部分が多く挙げられます。
知識を持っていないと判断が難しい部分も多いため、不明点や疑問点があれば、専門家や不動産会社などに早めに相談するようにしましょう。
※こちらは2023年7月5日時点での情報です。内容が変更になる可能性がございますのでご了承ください。
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